植物栄養学と醸造微生物学の分野横断型研究-酒米の肥培管理と日本酒の発酵特性の関係-

酒米作りにおける肥料成分の違いから酵母の働きと酒の味に及ぼす影響を解き明かす

研究(六花) 2024.09.24
宮本託志?西田郁久 日本酒学センター 特任助教

2018年に新潟県、新潟県酒造組合との連携で立ち上がった新潟大学日本酒学センター。宮本託志特任助教と西田郁久特任助教は米や酵母に関する研究を行う「醸造ユニット」に所属する。

「酒米を研究対象にする私と、発酵を専門にする西田先生が、共同で収穫した酒米を原料に日本酒を造り、その品質評価までを一貫して行う研究に取り組みました」と宮本特任助教。日本酒学分野において「酒米作り」や「発酵」を単体でテーマにした研究は前例があるが、酒米作りから着手し、日本酒の発酵特性や味わいとの関連性に迫る研究は珍しいという。

研究ではまず、宮本特任助教がイネに与える肥料の窒素の成分量を変えて栽培試験を実施する。そこで収穫された米を用いて「日本酒小仕込み試験」を実施。約3週間かけて完成した日本酒に含まれる成分を西田特任助教が分析する。2021年から3回行った試験?分析の結果、肥料に含まれる窒素量が日本酒のコクや旨味のもとになるアミノ酸やアルコールなどの成分量に影響を及ぼすことが分かった。

「酒米の出来によって、日本酒の成分にも変化が見られることが分かりました。そこで得られたデータをさらに詳しく分析し、研究を進めることで、日本酒や酒粕に含まれる新たな機能性成分や付加価値を発見できるのではと考えています」(西田特任助教)

酒米作りと酒造りをつなげた研究成果は、酒蔵が従来行ってきた酒造りに、「商品開発」という形で酒米農家が参画する可能性を感じさせるものだ。「酒米作りの分野から日本酒造りに貢献したい。新しいスタイルから新しい日本酒が生まれることを期待しています」と宮本特任助教は話す。

また、西田特任助教はこう続ける。「日本酒学センターが連携するフランスのボルドー大学を訪問し利き酒を体験いただいた際、日本酒を初めて口にする現地の方にも『おいしい』と評価されました。今後、発酵に関わる酵母の研究をさらに進め、酵母の改良を通じた日本酒のバラエティー化にも取り組みたいです。そしてさらなる分野横断型研究も展開し、国内外に、日本酒の新たな魅力を伝えていきたいです」

異なる施肥条件でのイネの屋外栽培試験
日本酒の小仕込み試験

プロフィール

宮本託志?西田郁久

日本酒学センター 特任助教

宮本託志特任助教(右)
博士(農学)。専門は植物栄養学。肥料として与えた成分が植物に吸収されるメカニズムや、成長に与える影響を研究する。

西田郁久特任助教(左)
博士(バイオサイエンス)。専門は醸造微生物学。酵母のアルコール発酵や代謝産物機能性に関して研究する。

※記事の内容、プロフィール等は2024年9月時点のものです。

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掲載誌

この記事は、新潟大学季刊広報誌「六花」第49号にも掲載されています。

新潟大学季刊広報誌「六花」

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