算数?数学教育におけるリテラシーの育成

算数?数学を学ぶ目的?目標は変化する 時代に応じた教育のためのカリキュラムが必要

研究(六花) 2021.12.07
阿部好貴 大学院教育実践学研究科 准教授

算数や数学を学ぶ目的?目標や意義は、時代や社会によって変わるという。阿部好貴准教授は、中学?高校教育に着目。近年の研究では、数学教育の歴史的な展開を紐解き、先行研究の文献解釈や学習指導要領、教科書を考察対象に、リテラシーの視点から分析することで研究を進めている。

「日本で数学教育が興った明治初期、数学を学ぶことの目的は、数学自体を理解し、正しい思考方法や言語運用能力を育成することでした。そこから時を経て、終戦直後は日常場面に即した形での数学教育が重視されたり、70年代には最先端の科学技術に即した教育内容が取り入れられたりしてきました。近年の数学教育では、生徒の資質?能力や社会参加能力を高めることが強調されています。社会情勢の変化や科学技術の進歩が著しい現代では、さらに問題解決能力やICT活用などのリテラシーが求められているように思います。数学を学ぶ目的?目標は変化していくため、時代に応じた教育のためのカリキュラムが求められます」

今後、数学的な思考は、ますます必要になると続ける。
「私たちが日常的に使うコンピュータの中に複雑な数学が存在するように、IT分野の発展が著しい現代社会には、社会の至るところで実に複雑に数学が埋め込まれています。ボタンを押すだけで結論にたどり着くので、一見すると私たちは社会生活の上で数学をほとんど必要としていないように見えます。そのため、先行研究で指摘される『社会の数学化と個人の脱数学化』はどんどん進んでいるように思いますが、そのような社会においては、今後、数学的な思考は逆にますます不可欠になっていくのです」

高校?大学進学のためだけではなく、また人材育成のためだけでもなく、本質的に『数学を学ぶ意味?意義』を問い続ける阿部准教授は、数学をツールとして使うと物事の理解度が高まることに焦点を当てる。
「課題を発見し解決するプロセスで数学的なモデルが役に立ったり、なぜなのかという根拠を明らかにするために論証することが、リテラシーとして不可欠なエッセンスであることを、今日的な文脈で捉えることが重要です。もちろん、数学自体の面白さも前提として。中学?高校の数学教育で構成した知識や思考力を、社会参加するときに使えるよう、適したカリキュラムを提示していきたいと思います」

リテラシーの視点から教科書を分析した研究のポスター発表(2017年国際数学教育心理研究学会@シンガポール)

研究成果をまとめた阿部准教授の書籍

プロフィール

阿部好貴

大学院教育実践学研究科 准教授

博士(教育学)。専門は数学教育学。算数や数学教育が展開されるメカニズムに着目し研究している。

研究者総覧

素顔

阿部好貴准教授の研究室にある黒板に掲示された色紙。歴代のゼミ生から送られたメッセージが書き込まれています。准教授の人柄やゼミ生とのコミュニケーションの様子が伝わってきます。

※記事の内容、プロフィール等は2021年11月当時のものです。

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掲載誌

この記事は、新潟大学季刊広報誌「六花」第38号にも掲載されています。

新潟大学季刊広報誌「六花」

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