新品種開発と栽培対策で高温に負けないイネをつくる
猛暑を前提とした米作りを研究 日本の稲作の未来に貢献する
記録的な高温が続いた2023年夏、新潟県の主要な米品種であるコシヒカリの1等米比率は4.7%と過去最低水準になった。等級低下は生産者の収益に大きく関わるため、将来的な生産者減少も懸念されている。
「イネが生長する登熟(とうじゅく)期に高温にさらされたことで、でんぷんの合成が阻害されました。その結果、玄米が白濁化しやすくなり、検査等級の低下に影響を及ぼしました」と、ゲノムを使った遺伝子解析でイネの新品種を研究する山崎将紀教授は話す。新品種開発のためにコシヒカリと交雑する3,567系統のイネを育て、高温に強い遺伝子を持つ新品種を発見。また、肥料の追加やバイオスティミュラント(化学薬品)の併用が高温対策に効果的なことも実証した。
「新品種は試験栽培を続けて2~3年後の登録を目指しています。今後も続くと考えられている温暖化等の気候変動に対応し、生産者の期待に応えるため、様々な新品種や対策を準備することが研究者の使命だと思っています」
新品種の実用化には費用と時間が必要だ。2023年と2024年、新品種開発や高温対策のためにクラウドファンディングを実施。目標額を大きく上回る支援を集めた。
「クラウドファンディングを行ったことで、県内の生産者や県産コシヒカリの消費者が多い関東圏からも期待以上の反応をいただき、一般の方々にも理解が広がったと感じています。いただいた寄附を活用して今後は暑さに強い新品種を作るとともに、暑さに強いイネの遺伝子メカニズムの解明を目指します。新潟県の稲作に貢献できるよう、若い生産者たちとも栽培対策について対話を重ねていきたいと考えています」
新潟大学農学部附属フィールド科学教育研究センターでは、新潟市西区新通にある約2ヘクタールの圃場でコシヒカリや新大コシヒカリ、酒米の越淡麗、新品種などを作付けしている
プロフィール
山崎将紀
博士(農学)。専門は遺伝育種学と作物学。イネを対象に遺伝子や新品種の育成、生産者ができる栽培の研究を行う。新潟県が主催する2023年度産米に関する研究会の座長を務める
素顔
将棋が好きだという山崎教授は、新聞に掲載された棋譜を読むのが息抜きの時間になっているという。
※記事の内容、プロフィール等は2024年12月時点のものです。
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掲載誌
この記事は、新潟大学季刊広報誌「六花」第50号にも掲載されています。