自治体事業と公私協働
より合理的な自治体事業の遂行を後押しする法制度と法理論確立に貢献
自治体が提供する公共サービスの経営面に関して、行政法学の観点からアプローチを進める宮森征司准教授。水道事業や公共施設の管理運営など、自治体事業(自治体による公共サービスの提供)における公私協働に主に組織面からフォーカスして法理論の研究を行う。
「公私協働とは、公共サービスを行政や自治体だけでなく、民間企業や市民団体との連携によって展開していくことであり、第三セクターなどがそれにあたります。日本ではバブル期に第三セクターの数が増えましたが、夕張市の財政破綻をはじめ自治体の財政に深刻な影響を及ぼすケースが多くみられました。なぜこういった事態を招いてしまうのか、そして第三セクターのような公私協働組織に対してどのような法律?規律を設けていくべきかについて、日本の歴史的背景や他国の法制度の分析をもとに研究しています」
自治体事業のガバナンスに関する仕組みを紐解く上で、比較対象にした国はドイツだ。ドイツは古くから公私協働を伴った自治体事業が盛んで、公共サービスを提供する公私協働組織の経営に自治体が関与する際の法制度が整っている。
「日本の第三セクターの失敗は、経営の見通しの甘さと、公私の責任分担のあいまいさが原因とされています。税金を原資とする以上、公的な主体が、出資に対する責任をどう果たすのかを明確にすることが重要であり、それを支える仕組みや法制度にはどのようなものがあるのかをドイツ法から学びました。しかし、日本において、ドイツの法制度をそのまま当てはめることは良策ではありません。日本の歴史や文化を考慮しながら、どのような法制度が望ましいのか、研究を継続していきます」
厳しい財政状況が続く日本において、現行と同水準の公共サービスを維持するため、自治体事業における公私協働が一層進むことも考えられる。宮森准教授は、「責任」と「経営への関与」とのバランスを考え、住民理解を得られる枠組みを確立していくことが重要であると強調する。
「自治体事業や公共サービスの目的は、地域課題を解決し、豊かで快適な暮らしを提供することです。今後、様々な分野で公私協働を進めるにあたり、住民の方々にとって分かりやすく、かつ納得してもらえるように、法理論の構築に貢献したいと考えています」
プロフィール
素顔
サックスの演奏が趣味という宮森准教授。音楽は各パートがそれぞれの役割をどう果たしていくかという点で、組織論に通じる部分があるという。
※記事の内容、プロフィール等は2023年7月当時のものです。
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掲載誌
この記事は、新潟大学季刊広報誌「六花」第45号にも掲載されています。