篮球比分直播6年度卒業式 学長告辞
卒業生、修了生の皆さん、卒業、修了まことにおめでとうございます。また、ご臨席のご家族の皆様にも心からお祝いを申し上げます。
今年度の学部卒業生は2,301名、大学院修了生は668名、学位論文提出者は3名、養護教諭特別別科修了生は49名です。本日、ここ朱鷺メッセで一堂に会して、全学合同の卒業式を挙行することができますことを、大変うれしく思います。特に、学部を卒業される皆さんの多くは、医学科?歯学科を除けば、ちょうど4年前の入学時はCOVID-19のパンデミックの最中で、この会場で入学式を開催することができませんでした。また、入学後も授業はオンラインなどの非対面形式が多く、課外活動を含めてさまざまな行動が制限されたスタートだったと思います。
それから4年が経ちましたが、止まない雨がないように、コロナ禍も収まり、新しい日常が訪れるようになりました。そうした難しく厳しい期間、目まぐるしく移り変わった期間を乗り越えて、晴れて皆さんはこの卒業式を迎えたわけですから、その感慨もひとしおのことと思います。
この間、コロナ禍だけでなく、ウクライナ情勢を始めとして、世界でさまざまな紛争や問題が起こり、国際社会の枠組みもきわめて流動性を増してきています。さらに、気候変動や天災の数々。私たちのまわりは、まさに常に流動的で、予期せぬ出来事に満ち満ちています。
一方、科学技術の進歩を牽引力として発展してきた社会に目を向ければ、デジタルトランスフォーメーションの波が押し寄せており、ビッグデータや人工知能(AI)が加わった情報社会が急速に進む中、さらに生成系AIの出現によって、社会の仕組みがきわめて大きく変わる転換期に入ったことを強く実感するのではないでしょうか?
「シングラリティSingularity」という言葉をご存じの方も多いと思います。この言葉はもともと数学と物理学で使われる用語でしたが、最近はAIが人類の知能に到達する点、すなわち技術的到達点を指す言葉として用いられたことで、知られるようになりました。そして、2045年にはその点にまで到達し、その後はAIが人類を越える時代に突入するという予測が話題になりました。しかし、それも生成系AIの出現などで、もっと早まる可能性が指摘されています。すでに、デジタルトランスフォーメーションの波により、仕事の内容も、社会のシステムも大きく変わり始めていますが、その先に、どんな世界が待ち受けているのでしょうか?
もっと別の視点としては、高齢化という現象もあります。人類の寿命は以前よりも伸びてきており、例えば2024年の日本の平均寿命は女性が87.14歳、男性が81.09歳にまで伸びてきています。昔は「人生50年」と言われていたのが、今や「人生100年」と言われる時代に突入し始めています。これは、医学の進歩、例えば出産の安全性の向上や、感染症、がんや脳血管疾患、心臓病など死に至る病気の治療法や予防法の開発など、医学の進歩によるものですが、生産年齢を65歳までとする今の考え方では、その後さらに30年以上の老齢期ができることになります。一方で少子化の波も押し寄せており、こうした現象が抱える多様な新しい問題を見渡しても、未来は極めて混とんとしています。
こうした混とんとした予測できない未来を、皆さんはこれから生きていくことになります。しかし、そうした中にあっても、どうか自身の目標を見失わずに、皆さんの能力を存分に発揮して、社会で活躍していってほしいと私は願っています。
新潟大学の理念は「自律と創生」です。文字通り、「自律」は自分自身で立てた規範に従って行動すること、そして「創生」は新たなものを作り出すことです。折に触れて話してきたつもりですが、新潟大学は、この「自律と創生」の教育理念のもとで皆さんに接してきました。したがって、新潟大学で学んできた皆さんは、他人の真似ではなく、「常に自分で自分の規範を立てる習慣」を養ってくれたと私は信じています。そして、それこそが、予測できない未来に立ち向かう力です。
そして、皆さんには、これからも知的好奇心を持ち続け、学ぶことを忘れないでいてもらいたいと願っています。知的好奇心は創造力の源です。そして学び続けること、継続は力です。それが、これからの社会を生き抜く皆さんにとって、もっとも必要な力だと私は思います。どうか「知的好奇心」を失わず、「学び続けること」を忘れずに、さまざまなことに挑戦し、自身の夢や目標に向かって進んでいってもらいたいと思います。
新潟大学は直近の未来である2030年を見据えた将来ビジョンを策定しており、その中で、新潟大学が果たすべきミッションを、「未来のライフ?イノベーションのフロントランナー」となることと定めています。
ここでいう「ライフ?イノベーション」とは、単に「医療?健康?福祉分野」に留まらず、21世紀を生きる我々の「生命」、「人生」、「生き方」、「社会の在り方」、「環境との関わり」と、それらの土台となる「地球」や「自然」についての新たな価値と意味を生み出すための革新を指しています。すなわち、ひとことで言えば、新潟大学が目指すライフ?イノベーションは、「人類を幸福にするための革新」のことです。私は、卒業生?修了生の皆さんにも、このミッションを共有してもらい、「未来のライフ?イノベーションのフロントランナー」となってくださることを大いに期待しています。
最後になりますが、私の好きな言葉に、「一灯を頼め」という言葉があります。これは、江戸時代の儒学者?佐藤一斎が残した言葉で、もう少し正確には、「一灯をさげて暗夜を行く、暗夜を憂うことなかれ、ただ、一灯を頼め」となっています。意味は明解、どんな暗い不安な道でも、手に持った灯りを信じて前に進め、というものですが、現実は誰もが恐怖を感じる深い闇というものもあり、たとえ灯りを持っていても足がすくんでしまう状況もあります。そんな時に、私に勇気を奮い立たせてくれるのが「一灯を頼め」、というこの言葉です。この言葉を私からの餞(はなむけ)として、皆さんにお贈りしたいと思います。
どうか、新潟大学で学んだこと、「自律と創生」の精神を一灯と頼み、あるいは自身の「夢」や「希望」を一灯と頼み、恐れずに、予測できない未来に立ち向かっていってください。知的好奇心を持ち続け、学ぶことを忘れずに前に進んでいってください。それが、新潟のシンボル「柳」のように、しなやかで折れない「真の強さ」に繋がるのだと思います。
皆さん、新潟大学は皆さんの母校であり故郷です。新潟大学はこれからも皆さんを見守っています。皆さんが新潟大学と絆を結びながら、未来のライフ?イノベーションのフロントランナーとしてさまざまな方面で活躍されることを、また皆さんの未来に幸多きことを心から祈って、私の告辞とします。本日はまことにおめでとうございます。
篮球比分直播7年3月24日
新潟大学長 牛木辰男