新潟大学創立75周年記念式典 式辞
本日は、お忙しい中、新潟大学創立75周年記念式典に、文部科学省をはじめとして、県内外の関係諸機関?企業の皆様、海外協定校の皆様、同窓の皆様に多数ご臨席を賜わりまして、誠にありがとうございます。新潟大学を代表して、心よりお礼を申し上げます。
さて、新潟大学の源流は、明治初期まで遡ることができます。古くは明治3年設立の共立病院に端を発し、引き続く私立新潟病院を経て、明治43年の官立新潟医学専門学校の設立、さらに旧制新潟医科大学へとつながりました。また、明治7年設立の官立新潟師範学校とそれに続く第一?第二師範学校への道や、大正8年の旧制新潟高等学校の創立があり、このほか新潟県立農林専門学校、長岡工業専門学校の設立がありました。こうした中で、戦後、昭和24年に公布された国立学校設置法に基づいて、これらの高等教育機関が統合して、新制の国立総合大学?新潟大学に生まれ変わりました。以来、そこから数えて今年で75年を迎えました。
創立当時は、今ほど述べた経緯から、人文?教育?理?医?工?農の6学部からなり、これに附属図書館、医学部附属病院及び看護婦養成施設が加わったものでした。また、新潟市の他に、新発田市、長岡市、高田市に、それぞれ分校が置かれていました。発足当時の大学の規模は、学生の入学定員1,395名、教職員数1,491名との記録が残っています。
その後、昭和40年に歯学部が設置され、昭和52年に人文学部が法文学部に改称、昭和55年に法文学部を人文学部、法学部、経済学部の3学部に改組、さらに平成29年に新しい学部として創生学部を設置、篮球比分直播2年に経済学部を経済科学部に改組という経緯を経て、現在に至っています。
したがって、現在の学部数は10学部、すなわち人文学部、教育学部、法学部、経済科学部、理学部、医学部、歯学部、工学部、農学部、そして創生学部になります。また、大学院として、現代社会文化研究科、自然科学研究科、医歯学総合研究科、保健学研究科、教育実践学研究科の5研究科を有し、研究所として脳研究所と災害?復興科学研究所を、さらに医歯学総合病院と附属学校園をもった大規模総合大学に成長しました。現在の学生総数約12,000名、教職員数約3,200名を数えます。
また、新潟大学がこの75年の間に社会に送り出した卒業生?修了生は延べ16万名を超えています。海外との交流も少しずつ拡大してきており、現在の大学間?部局間の海外交流協定件数は、45か国?地域、366件、本日の式典にも多くの協定校の皆さんにご参加いただいています。
振り返れば、75年前の開学当時の本学の建物、施設は当然のことながら木造で、教室や実験器具等も少なく、教育や研究を進める上では極めて厳しい環境でした。その後、県内各地に点在しているキャンパスの統合については、開学10年が過ぎた昭和37年頃から検討が始まりましたが、現在のように新潟市の五十嵐キャンパスと旭町キャンパスに統合?移転が完了したのは、昭和57年の事でした。この間20年、実際の統合移転開始から数えても実に足かけ13年にわたる大事業であり、さらに全国的な学生運動の渦に巻き込まれてのことでしたから、本学の当時の関係者の方々の血のにじむ努力が偲ばれるものです。
一方で、教育の組織については、開学後すぐの昭和25年に学内措置で置かれた一般教養部が昭和39年に教養部に省令化され、教養教育が行われてきましたが、その後、平成3年の大学設置基準の大綱化とともに、全学出動による教養教育の実施に移行するという大きな変化がありました。そして、さらに巨大な大学変革の波は、平成16年に行われた国立大学法人化であり、これにより本学を含めたすべての国立大学に構造改革が迫られる歴史的な転換を経ることになりました。そこから数えると、今年でちょうど20年になります。
このように、国立大学法人「新潟大学」に移行した本学は、「自律と創生」を全学の理念とし、教育と研究を通して、地域や世界の着実な発展に貢献することを目標に明記するとともに、教員組織と教育組織を分けるいわゆる「教教分離」をいち早く導入しました。すなわち、教員組織を、人文社会科学系、自然科学系、及び医歯学系の3学系からなる「教育研究院」とし、これにより、学部の枠や分野の境界を越えた多様な研究活動や組織作り、教員グループ形成が可能になる体制を目指してきました。
一方で、法人化後に国立大学が置かれてきた環境は極めて厳しく、国からの運営費交付金は減額の一途をたどることになり、たゆまぬ経営改革を進めながら、地域に根差した国立大学の使命を担うための努力を先輩諸氏がされてきました。そして、それは今も続いており、むしろ、さらに厳しい時代を迎えていると言えるかもしれません。
しかしながら、創立当初から新潟大学が託された役割?使命は変わることはありません。すなわち、新潟大学が我が国の高等教育の拠点として、地域に根差し優れた人材を育成しながら、国際的な競争力のある研究を推進すること。そして、その一方で社会を牽引するリーダーとして社会連携を推進するという使命です。
そうしたことを感じながら、新潟大学は数年前に、直近の未来である2030年に向けた将来ビジョンを策定しました。また、そこに向けて新潟大学が果たすべき使命?ミッションを、「未来のライフ?イノベーションのフロントランナー」となることと定めました。
このことについては、さまざまな機会で紹介してきましたが、ここでいう「ライフ?イノベーション」とは、単に「医療?健康?福祉分野」に留まらず、21世紀を生きる我々の「生命」、「人生」、「生き方」、「社会の在り方」、「環境との関わり」と、それらの土台となる「地球」や「自然」についての新たな価値と意味を生み出すための革新を指しています。すなわち、新潟大学が目指す「ライフ?イノベーション」は、人類を幸福にするための革新のことです。このミッションのもとに、現在、新潟大学は教育?研究そして社会との共創(co-creation)を3本の太い柱として再定義し、さまざまな取り組みをしているところです。
そして、創立75周年という節目を迎えた今年、私達はこれまでを振り返り、本学を築き上げ支えてこられた歴代の学長をはじめ、関係の皆様方のご苦労とご尽力に深く感謝するとともに、これからの新潟大学へと思いを馳せています。
創立75周年は未来の新潟大学、未来の日本、未来の地球へ向けた一つの通過点でしかありません。本日、創立75周年記念式典を迎えたことは、たしかに私達の大きな喜びですが、これから迎える未来への通過点として、更なる挑戦を続けることを誓い、心に刻む場でこそあるべきでしょう。創立75周年記念事業の一環として、「キャッチコピー」と「ロゴマーク」を一般公募しましたが、キャッチコピーとして選ばれた言葉「新たな挑戦 大きな貢献」は、まさに新潟大学が未来に向けて新たな挑戦をし、これからのグローバルな社会に向き合いながら、地域に、そして世界に貢献できる大学であり続けるための決意を示すのにふさわしいと思います。
新潟大学は、この創立75周年の節目に立ち、未来に向けてさらなる一歩を踏み出し、志を高く掲げながら邁進していきます。どうぞ、ご来賓ならびに関係各位におかれましては、今後とも私達への一層のご支援?ご声援のほどをお願い申し上げます。
以上、皆様へのこれまでの感謝の念と変わらぬご支援を重ねて申し上げて、私の式辞とさせていただきます。本日は、まことに有り難うございます。
篮球比分直播6年10月19日
新潟大学長 牛木辰男