致死的な重症薬疹の候補治療薬を開発-重症薬疹に特異的な細胞死を抑制する阻害剤を探索し、非臨床試験で有効性を明らかに-
本学大学院医歯学総合研究科博士課程の木村春奈さん(大学院生)、本学医歯学総合病院皮膚科の長谷川瑛人助教、本学大学院医歯学総合研究科皮膚科学分野の阿部理一郎教授らと東京大学大学院理学系研究科化学専攻分析化学研究室の小澤岳昌教授ら、山梨大学大学院総合研究部医学域の小川陽一講師(医学部皮膚科学講座)らの共同研究グループは、重篤な薬疹であるスティーヴンス?ジョンソン症候群(以下、SJS)や中毒性表皮壊死症(以下、TEN)の予後を改善させる可能性がある新規治療薬を開発しました。
SJS/TENは致死率が30%と非常に生命予後の悪い疾患です。本研究グループは過去に、病変部の皮膚でformyl peptide receptor 1を介したネクロプトーシス(注1)という種類の細胞死が起きていることを明らかにしました。本研究では、ネクロプトーシスを阻害する薬剤を開発し、SJS/TENのモデル細胞において細胞死を抑制し、モデルマウスにおいて疾患発症を抑える結果を得ました。本研究結果は、2025年9月30日、科学誌「Nature Communications」に掲載されました。
本研究成果のポイント
- SJS/TENは致死率の高い重篤な疾患であり、有効性の高い新規の治療薬の開発が必要です。過去に本研究グループは、病変部の皮膚の細胞でネクロプトーシスという種類の細胞死が起きていることを明らかにしました。
- ネクロプトーシスを抑制するSJS/TENの新規の治療薬を開発するために、20万以上の化合物を含む化合物ライブラリーから、ネクロプトーシス阻害剤を探索するスクリーニング方法を開発しました。
- SJS/TENのモデル細胞、モデルマウスを用いた実験において、この薬剤がネクロプトーシスを抑制することで、SJS/TENの治療に有効である可能性を示しました。
【用語解説】
(注1)ネクロプトーシス
プログラムされた細胞死の1種。細胞死には外的刺激などによって受動的に起こるネクローシスという細胞死と、体内で管理、調節されて能動的に起こるプログラム細胞死の2つに大別される。プログラム細胞死にはネクロプトーシスの他に、アポトーシスやパイトーシスなどの種類がある。
研究内容の詳細
致死的な重症薬疹の候補治療薬を開発-重症薬疹に特異的な細胞死を抑制する阻害剤を探索し、非臨床試験で有効性を明らかに-(PDF:1MB)
論文情報
【掲載誌】Nature communications
【論文タイトル】Inhibition of formyl peptide receptor-1-mediated cell death as a therapy for lethal cutaneous drug reactions in preclinical models
【著者】Haruna Kimura, Akito Hasegawa*, Tomoki Nishiguchi, Hong Ha Nguyen, Masatoshi Eguchi, Manao Kinoshita, Youichi Ogawa, Takeaki Ozawa*, Riichiro Abe*
*:corresponding author
【doi】10.1038/s41467-025-63744-0
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