高効率?高安定性を有する光透過性メソポーラス酸化タングステン薄膜の開発に成功-太陽光水分解によるグリーン水素製造へ大きく前進-
持続可能なカーボンニュートラルな社会の実現に向けた取り組みが世界的に進む中、太陽光水分解によるグリーン水素製造1)に多くの関心が集まっています。半導体電極を用いた光電気化学的(PEC)水分解は有力なグリーン水素製造技術の一つとして期待されていますが、高効率?高安定性を有する光酸素発生アノード2)の開発が重要な課題です。さらに、タンデム型PEC水分解システム3)を構築するためには、光透過性の優れた光酸素発生アノードの開発が必要です。本学工学部のDebraj Chandra特任准教授、坪ノ内優太准教授、Zaki N. Zahran外国人客員研究員、八木政行教授らの研究チームは、高効率?高安定性を有し、光透過性に優れたメソポーラス酸化タングステン(WO3)光酸素発生アノードの開発に成功しました。これにより、PEC水分解による高効率グリーン水素製造のための重要なブレークスルーが得られたとともに、高効率タンデム型PEC水分解システムの開発への道筋が得られました。
本研究成果のポイント
- 高効率な光電気化学(PEC)酸素発生のための、光透過性の優れたメソポーラス酸化タングステン(WO3)光酸素発生アノードを開発しました。
- 本WO3光酸素発生アノードは優れた安定性と高いファラデー効率4)を実現しました。
- タンデム型PEC水分解デバイスに向けて、光透過性に優れたWO3光酸素発生アノードの合成戦略を確立しました。
【用語解説】
(注1)グリーン水素製造
二酸化炭素を排出しない水素製造
(注2)光酸素発生アノード
光照射により、水が酸化され酸素が発生する電極
(注3)タンデム型PEC水分解システム
光酸素発生アノードで吸収されない光を透過させて、対極の光水素発生カソードで透過した光を利用するPEC水分解システム
(注4)ファラデー効率
電気化学反応で流れた電気量に対する生成物の生成効率
研究内容の詳細
高効率?高安定性を有する光透過性メソポーラス酸化タングステン薄膜の開発に成功-太陽光水分解によるグリーン水素製造へ大きく前進-(PDF:556KB)
論文情報
【掲載誌】Applied Catalysis B: Environment and Energy
【論文タイトル】Optically transparent WO3 films with organized mesopores and oriented crystallinity: An efficient and robust photoanode for visible-light-driven water oxidation at neutral pH
【著者】Debraj Chandra, Kosei Ouchi, Yuta Tsubonouchi, Zaki N. Zahran, Masayuki Yagi
【doi】10.1016/j.apcatb.2025.125733
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