天の川銀河の辺境で星誕生の息吹を発見 - これまで謎に包まれていた天の川銀河における星形成の普遍性に迫る -
本学大学院自然科学研究科博士前期課程の池田達紀さん、理学部の下西隆准教授、創生学部の金子紘之特任准教授、国立天文台の泉奈都子特任助教らの研究グループは、アルマ望遠鏡(注1)を用いて私たちの住む天の川銀河の外縁部(注2)を観測し、これまで発見されていなかった新しい原始星(星の赤ちゃん)を発見しました。さらに、発見した原始星には南北方向に双極的な高速度の分子ガスの放射(アウトフロー?ジェット(注3))が付随していることが明らかになりました。天の川銀河の外縁領域は、太陽系の近傍とは異なる環境を持つことが知られています。今回の発見は、これまで謎に包まれていた天の川銀河内の多様な環境における星形成過程の普遍性を理解する上で大きく貢献することが期待されます。
本研究成果のポイント
- 世界で初めて、私たちの住む天の川銀河の外縁部において産まれたばかりの星に伴う分子ガス放出現象を発見。
- 太陽系周辺とは異なる環境を持つ天の川銀河の外縁部は、天の川銀河全体の星形成プロセスの普遍性を理解する上で重要。
- 今回の成果は、星形成過程が天の川銀河の外縁部においても太陽系周辺と変わらない可能性を示唆。
【用語解説】
(注1)アルマ望遠鏡
アルマ望遠鏡(正式には、アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計、Atacama Large Millimeter/submillimeter Array、ALMA)は、南米チリ共和国北部にあるアタカマ砂漠の標高5000メートルに建設された電波望遠鏡です。パラボラアンテナ66台を組み合わせる干渉計方式の巨大望遠鏡で、ミリ波?サブミリ波領域では分解能?感度ともに世界一の性能を誇ります。アルマ望遠鏡は、国立天文台を代表とする東アジア、米国国立電波天文台を代表とする北米連合、ヨーロッパ南天天文台を代表とするヨーロッパ、及びチリ共和国が協力して建設?運用する国際的な共同プロジェクトです。
(注2)天の川銀河の外縁部
私たちの住む銀河系の中では、星やガスの大部分は銀河円盤と呼ばれる領域に分布しています。銀河円盤の大きさは半径5万から6万5千光年程度です。太陽系は、銀河の中心から約2万6千光年離れた場所に位置しています。今回の研究対象である銀河系外縁部とは、一般に銀河中心から約4万4千光年以上離れた領域のことを指します。
(注3)アウトフロー?ジェット
生まれたばかりの星は、成長していく過程で、回転する勢い(角運動量)が過剰になるのを抑えるために、双極的に分子ガスを噴き出すことが知られています。この現象を「アウトフロー」と呼んでいます。また、秒速50km以上にも及ぶアウトフローよりもさらに高速で噴き出す成分は「ジェット」と呼ばれます。ジェットは、低速度のアウトフローと比較して細く絞られた(まとまった)流れであることや、連続的ではなく、まるで弾丸のように間欠的に放出されるものも存在することが知られています。
研究内容の詳細
天の川銀河の辺境で星誕生の息吹を発見- これまで謎に包まれていた天の川銀河における星形成の普遍性に迫る -
(PDF:1MB)
論文情報
【掲載誌】The Astrophysical Journal
【論文タイトル】The detection of spatially resolved protostellar outflows and episodic jets in the outer Galaxy
【著者】Toki Ikeda, Takashi Shimonishi, Natsuko Izumi, Hiroyuki Kaneko, Satoko Takahashi, Kei Tanaka, Kenji Furuya, and Chikako Yasui
【doi】10.3847/1538-4357/ade235
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