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タンパク尿発症の分子メカニズムを解明-標的分子Cdc42を同定、新規タンパク尿治療薬開発に期待-

2025年07月23日 水曜日 研究成果

タンパク尿は腎臓病の最も重要な臨床症状であるだけでなく、腎臓病を進行させる最大の増悪因子です。しかし、その発症メカニズムには不明な点が多く、原因分子を標的とした有効な治療薬はありません。本学大学院医歯学総合研究科腎研究センター腎分子病態学分野の河内裕教授(研究当時、現本学名誉教授)、内許玉楓 (Zhang, Ying) 助教、福住好恭准教授らの研究グループは、タンパク尿発症を引き起こす細胞内シグナル伝達経路を解明し、この経路で中心的な役割を果たす分子Cdc42を同定しました。Cdc42は、新規タンパク尿治療薬の重要な標的になると考えられます。本研究成果は腎臓学分野のトップジャーナルである『Journal of the American Society of Nephrology(米国腎臓学会誌)』に掲載されました。

本研究成果のポイント

  • 腎糸球体上皮細胞(注1)の「スリット膜(注2)」はタンパク尿(血液中のタンパク質が尿に漏れ出てしまっている状態)の発症を防ぐフィルターのような構造物です。このスリット膜が細胞外からの刺激を受けると、細胞内の「Cdc42」(細胞の形や方向性を制御する重要なタンパク質)の働きが活発になることを明らかにしました。
  • Cdc42が過剰に働くことで、細胞内で異常なシグナル伝達が起こり、その結果、スリット膜の構造が崩壊し、タンパク尿が発症することを明らかにしました。
  • Cdc42の機能制御による新規タンパク尿治療薬の開発が期待されます。
【用語解説】

(注1)腎糸球体上皮細胞:
糸球体を構成する3種の細胞の1つで、糸球体の最外層に位置し、糸球体の形態の維持、糸球体のバリア機能の維持において最も重要な役割を果たしている細胞です。神経細胞や心筋細胞と同様、生体内で最も分化した細胞の1つで増殖能を持っていません。

(注2)スリット膜:
糸球体上皮細胞間に存在する細胞間接着装置で、タンパク尿発症の責任部位です。

研究内容の詳細

タンパク尿発症の分子メカニズムを解明-標的分子Cdc42を同定、新規タンパク尿治療薬開発に期待-(PDF:1MB)

論文情報

【掲載誌】Journal of the American Society of Nephrology
【論文タイトル】Cdc42 Activation in Antinephrin Antibody-Induced Nephropathy
【著者】Ying Zhang*, Yoshiyasu Fukusumi*, Hidenori Yasuda, Guoqing Chang, Mutsumi Kayaba, Hiroshi Kawachi(*:両者は同等に貢献)
Department of Cell Biology, Kidney Research Center, Niigata University Graduate School of Medical and Dental Sciences, Niigata, Japan
【doi】10.1681/ASN.0000000728

本件に関するお問い合わせ先

医歯学系総務課
E-mail shomu@med.niigata-u.ac.jp

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