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北アルプスにおける氷河の存在と維持機構を解明

2025年03月17日 月曜日 研究成果

本学理学部フィールド科学人材育成プログラムの奈良間千之教授を団長とする白馬連山氷河調査団が、2021~2022年に北アルプスの杓子沢および不帰沢の多年性雪渓(長野県白馬村)を調査し、これらが氷河であることを確認しました。杓子沢雪渓と不帰沢雪渓は、北アルプスで8番目、9番目に確認された氷河となります。

杓子沢氷河
唐松沢氷河(左)と不帰沢氷河(右)

本研究成果のポイント

  • 北アルプスの標高約2,000mに位置する杓子沢雪渓と不帰沢雪渓は、氷厚と流動の測定結果に基づき氷河であることが確認された。この2つの雪渓は、北アルプスで確認された8番目と9番目の氷河となる。
  • 氷厚と流動速度データから、高度別の長期的な年平均表面質量収支(注1)がはじめて明らかになり、雪線高度も特定された。また、北アルプスの氷河は、世界有数の多雪地域に位置する一方で、内陸アジアの乾燥地域の氷河並みに年間の氷交換量が少ないことが判明した。
  • 北アルプスの氷河は、地形効果(吹き溜まりや雪崩による積雪)により、多量の積雪を得ることで気候的雪線(注2)より低い標高2,200m 付近に局所的な涵養域が形成され、かつ質量交換の少ない状態で維持されていると考えられる。この特徴は温暖化が進む中で生き残る世界の山岳氷河の環境条件を示唆するものである。
【用語解説】

(注1)質量収支と雪線
氷河における雪氷の質量の出入りを考える際に、収入は1年間の総涵養量、支出は総消耗量、両者の和を氷河の質量収支という。氷河表面の雪氷の年間の涵養量が消耗量を上回る場所を涵養域、消耗量が涵養量を上回る場所を消耗域と呼び、涵養量と消耗量が平衡になる場所を平衡線、その長期にわたる平均的位置を雪線と呼ぶ。

(注2)気候的雪線と地形的雪線
気候的雪線とは、地形的な影響を除去した地域全体の気候条件を反映されて形成された氷河の雪線であり、地形的雪線とは、雪崩や吹き溜まりなど地形効果により多量の積雪を獲得して局地的に形成される氷河の雪線を指す。

研究の詳細

北アルプスにおける氷河の存在と維持機構を解明(PDF:1MB)

論文情報

【掲載誌】Frontiers in Earth Science
【論文タイトル】Identification and persistence mechanism of very small glaciers and perennial snow patches in the northern Japanese Alps
【著者】Kenshiro Arie, Chiyuki Narama, Kotaro Fukui, Hajime Iida
【doi】10.3389/feart.2025.1442884

本件に関するお問い合わせ先

広報事務室
E-mail pr-office@adm.niigata-u.ac.jp

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