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データジャーナルとの連携でデータ解析の自動化へ-開発10年目を迎えたプロテオーム統合データベース jPOSTでの世界初の試み-

2024年12月13日 金曜日 研究成果

本学大学院医歯学総合研究科バイオインフォーマティクス分野の奥田修二郎教授、京都大学大学院薬学研究科生体分子計測学分野の石濱泰教授らの研究グループは、公開されているプロテオーム(注1)のデータをデータベースに収録するに当たって不可欠な「詳細なメタデータ(注2)」を収集するため、日本プロテオーム学会との協力の下、データ論文を掲載するデータジャーナル(注3)「Journal of Proteome Data and Methods」を創刊しました。これによってメタデータを提供する研究者にもインセンティブが生まれ、また提出されたメタデータから半自動的に再解析を進める仕組みを整備したことによって、今後のデータベースへの大量データ収録の見通しが立ちました。これは世界的に問題視されている「メタデータ収集問題」への、世界初の直接的な対策です。

本研究成果のポイント

  • プロテオームのデータを再利用してデータベース化する際には詳細なメタデータが必要である。しかしこの収集は困難で、海外でも大きな問題として手付かずに近い。
  • 世界初の試みとして、データベースと直接連動してメタデータを収集するデータジャーナルを創刊した。これによって、研究者側にも詳細なメタデータを投稿するインセンティブが生じる。
  • 大量のデータ処理に対応できるよう、メタデータを(半)自動で解析するシステムも開発し、今後の大規模データベース構築を目指す。
【用語解説】

(注1)プロテオーム:タンパク質は生命の構造や機能で決定的に重要な役割を持ち、その構造は遺伝子に記録されています。遺伝子に記録された遺伝情報を基にタンパク質が合成されることをタンパク質の発現と呼び、発現しているタンパク質全体の集合のことをプロテオームと呼びます。ただし遺伝子と異なり、タンパク質は特定の条件の下でのみ発現するものもありますから、組織?環境?時間などが異なれば、実際に発現しているタンパク質の種類、プロテオームの中身は変動することもあります。
タンパク質が1個のみで生命現象を担っていることは稀で、通常は複数個のタンパク質が関与します。この観点からは、タンパク質の機能は同時に発現している(共発現している)タンパク質を同時に調査することが有効で、例えば疾病の対策などにもプロテオームの研究は重要と考えられます。このようにプロテオームを研究することをプロテオーム解析、或いはプロテオミクスと呼んでいます。

(注2)メタデータ:メタデータとは一般に、何かのデータ(の属性)について説明するデータのことをいいます。例えば携帯電話で写真を撮影すると、その写真を撮影した時刻や撮影地点の緯度経度が自動で記録されますが、これらはその写真のメタデータです。図書館に行くと収蔵されている書籍には図書館分類法に基づく分類ラベルが貼られていますが、この分類情報もその書籍のメタデータと言えます。
プロテオミクスなど生命科学の場合は、そのデータはどの生物種の試料なのか、試料はどのように採取し処理したか、測定ではどのようなパラメータを用いたか、などの多くの情報がメタデータとして必要になります。これらはデータベースに収録して検索用のキーワードとして用いると同時に、データを再利用するために再び解析作業を行う(再解析する)ときにも必要で、この情報が不充分な場合は結果も不充分になる可能性があります。

(注3)データジャーナル:一般に、データ論文を掲載する科学論文誌をデータジャーナルと呼んでいます。データ論文とは「(公開されている)データを再利用するために必要な情報」すなわちメタデータ(など)を報告するためのもので、データジャーナルとしては、引用数が非常に多いジャーナルとして知られる「Nature」の姉妹ジャーナル「Scientific Data」などが挙げられます。

研究内容の詳細

データジャーナルとの連携でデータ解析の自動化へ-開発10年目を迎えたプロテオーム統合データベース jPOSTでの世界初の試み-(PDF:0.7MB)

論文情報

【掲載誌】Nucleic Acids Research
【論文タイトル】jPOST environment accelerates the reuse and reanalysis of public proteome mass spectrometry data
【著者】Shujiro Okuda, Akiyasu C. Yoshizawa, Daiki Kobayashi, Yushi Takahashi, Yu Watanabe, Yuki Moriya, Atsushi Hatano, Tomoyo Takami, Masaki Matsumoto, Norie Araki, Tsuyoshi Tabata, Mio Iwasaki, Naoyuki Sugiyama, Yoshio Kodera, Satoshi Tanaka, Susumu Goto, Shin Kawano, Yasushi Ishihama
【doi】10.1093/nar/gkae1032

本件に関するお問い合わせ先

広報事務室
E-mail pr-office@adm.niigata-u.ac.jp

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