全身性エリテマトーデスの自己抗体産生を抑制する機構を解明-副作用の少ない新たな治療ターゲットとして期待-
本学大学院医歯学総合研究科腎研究センター腎?膠原病内科学分野の金子佳賢医学部准教授、自然科学系(理学部)の内海利男名誉教授らの研究グループは、東京医科歯科大学、日本大学との共同研究で、全身性エリテマトーデス(SLE)(注1)患者にみられる自己抗体の一種、リボゾーム(注2)に対する抗体に着目し、正常の状態では、抗体を産生する能力を持つ免疫細胞の一種、Bリンパ球(注3)に発現するCD72(注4)と呼ばれる受容体を介して、抗リボゾーム抗体が作られないように抑制がかけられていることを明らかにしました。本研究は動物実験による結果ですが、SLEにおける自己抗体産生を抑える新規治療ターゲットとしての可能性を開くものであり、臨床応用が期待されます。
本研究成果のポイント
- CD72とB細胞受容体がともにリボゾームと結合することで、B細胞受容体からのシグナル伝達が減弱し、細胞の活性化が弱まりました。
- CD72遺伝子を欠いたマウスでは、血液中にリボゾームに対する自己抗体が自然発生しました。
- CD72の機能を増強させることで、病原体への免疫応答を抑制せずに自己免疫反応のみを抑制する、新たな治療法の開発が期待されます。
【用語解説】
(注1)全身性エリテマトーデス(SLE)
免疫系の異常により、自分自身の体に対して免疫が反応し、様々な臓器に障害を及ぼす疾患。
(注2)リボゾーム
細胞内でメッセンジャーRNAを翻訳し、蛋白質を合成する器官。多数の蛋白質とリボゾームRNAで構成される。リボゾームに対する抗体はSLEで検出される。
(注3)Bリンパ球(B細胞)
免疫に働く白血球細胞の一種。病原体などの抗原とB細胞受容体を介して反応し、抗体を産生する能力を有する。
(注4)CD72
Bリンパ球細胞の細胞膜上に発現する蛋白。チロシン脱リン酸化酵素によりB細胞受容体シグナルを抑制する。
研究内容の詳細
全身性エリテマトーデスの自己抗体産生を抑制する機構を解明-副作用の少ない新たな治療ターゲットとして期待-(PDF:0.5MB)
論文情報
【掲載誌】Journal of Autoimmunity
【論文タイトル】CD72 is an inhibitory pattern recognition receptor that recognizes ribosomes and suppresses production of anti-ribosome autoantibody
【著者】Chizuru Akatsu, Takahiro Tsuneshige, Nobutaka Numoto, Wang Long, Toshio Uchiumi, Yoshikatsu Kaneko, Masatake Asano, Nobutoshi Ito, Takeshi Tsubata*(*: corresponding author)
【doi】10.1016/j.jaut.2024.103245
本件に関するお問い合わせ先
医歯学系総務課
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