免疫を正常に調節する化合物を同定-様々な感染症の治療に応用できる可能性-
本学大学院医歯学総合研究科微生物感染症学分野の齋藤瑠郁歯科医師(大学院生)と土門久哲准教授、寺尾豊教授らの研究グループは、新たな免疫調節薬を同定?報告しました。本研究グループは、これまで歯周炎や肺炎において感染者の免疫が撹乱されることにより、病態が悪化することを明らかにしてきました。免疫を正常に調節する化合物として、抗菌薬マクロライドが知られています。しかしながら、薬剤耐性菌の激増により、国策の「AMRアクションプラン」で抗菌薬マクロライドは使用制限が課せられています。そこで、本研究グループは、マクロライド誘導体研究の実績に優れる北里大学大村智記念研究所の砂塚敏明教授、廣瀬友靖教授、池田朱里助教らと大学間共同研究契約を締結し、抗菌作用の無いマクロライド誘導体を合成し、免疫調節作用のみを保持する化合物を選出しました。本成果は、2024年5月16日、国際科学誌「Journal of Biological Chemistry」のオンライン版で公開されました。
本研究成果のポイント
- 抗菌薬マクロライドは、薬剤耐性菌の急増に伴い、使用制限が課せられている。一方で、優れた副作用として、免疫調節を保有しており、感染症の悪化時に生じる免疫撹乱を治療する薬剤としての可能性も秘めている。
- 免疫調節とは、病的に低下した免疫応答を正常に高めつつ、一方で、病的に上昇した免疫応答を正常に抑制する働きのことである。
- マクロライド等の誘導体研究に優れる北里大学と感染症研究に優れる本学が共同研究を締結し、抗菌作用の無いマクロライドを合成し、免疫調節作用だけを残した化合物の選出に成功した。
- まずは、in vitroの実験系にて、薬剤耐性菌を生み出す怖れのない、免疫調節化合物の同定に成功した。現在は、動物モデルでの免疫調節効果を検証中である。
- 抗菌作用が無いことから、COVID-19などのウイルス感染症に対しても、免疫調節薬として活用できる可能性が期待される。
研究内容の詳細
免疫を正常に調節する化合物を同定-様々な感染症の治療に応用できる可能性-(PDF:0.5MB)
論文情報
【掲載誌】Journal of Biological Chemistry
【論文タイトル】A novel 12-membered ring non-antibiotic macrolide EM982 attenuates cytokine production by inhibiting IKKβ and IκBα phosphorylation
【著者】Saito R, Domon H, Hiyoshi T, Hirayama S, Maekawa T, Takenaka S, Noiri Y, Ikeda A, Hirose T, Sunazuka T, Terao Y
【doi】10.1016/j.jbc.2024.107384
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