緑繭由来のセリシンがX線照射による細胞へのダメージを軽減することを発見-がん患者のケアに新たな道を開く可能性-
本学大学院保健学研究科看護学分野の柿原奈保子准教授らの研究グループは、がんの放射線治療で副次的に生じる照射性皮膚障害を低減するため看護ケア方法を開発しています。これまでは乾燥肌に対する対処療法が一般的とされており、放射線照射によるダメージの低減に対するケアは確立されていませんでした。本研究では、ヒトケラチノサイト(注1)を用いて照射によるダメージ軽減効果について検討しました。その結果、通常の白繭由来セリシン(注2)では緩和効果は見られませんでしたが、フラボノイドを豊富に含む緑繭由来セリシンはX線照射による細胞障害を軽減しました。さらに、緑繭由来のセリシンは、活性酸素種(注3)と脂質過酸化(注4)のレベルを減少させることが明らかになりました。
本研究成果は、2024年2月6日、科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。
本研究成果のポイント
- フラボノイドを豊富に含む緑繭セリシンはヒトケラチノサイトにおいてX線照射による細胞障害を軽減しました。
- 緑繭由来セリシンがX線照射による細胞へのダメージを緩和する効果があることを示唆しており、放射線治療による皮膚ダメージを軽減し、がん患者さんのケアに新たな道を開く可能性を示しています。
【用語解説】
(注1)ヒトケラチノサイト;人の角化細胞。
(注2)セリシン;絹の生糸に含まれる蛋白質であり、そのアミノ酸組成は人の肌の角質層中にある天然保湿成分(NMF)に似ている。
(注3)活性酸素種;スーパーオキシドやヒドロキシラジカルのような反応性の高い酸素由来の分子の総称。
(注4)脂質過酸化;細胞膜などを構成するリン脂質などが酸化した状態。
研究内容の詳細
緑繭由来のセリシンがX線照射による細胞へのダメージを軽減することを発見-がん患者のケアに新たな道を開く可能性-(PDF:0.4MB)
論文情報
【掲載誌】Scientific Reports
【論文タイトル】Green cocoon-derived sericin reduces cellular damage caused by radiation in human keratinocytes
【著者】Nahoko Kakihara1*, Momoko Sato2, Ayaki Shirai2, Mizuki Koguchi2, Shiori Yamauchi2, Toshimichi Nakano3, Ryuta Sasamoto4 & Hideyo Sato2
1 Department of Nursing, Graduate School of Health Sciences, Niigata University, Niigata, Japan. 2 Department of Medical Technology, Faculty of Medicine, Niigata University, Niigata, Japan. 3 Department of Radiology and Radiation Oncology, Niigata University Graduate School of Medical and Dental Sciences, Niigata, Japan. 4 Department of Radiological Technology, Graduate School of Health Sciences, Niigata University, Niigata, Japan. *email: kakihara@clg.niigata-u.ac.jp
【doi】10.1038/s41598-024-53712-x
本件に関するお問い合わせ先
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