バーチャルリアリティや生成AIを組み合わせた仮想空間での実践的な学習方法の開発?活用-最新技術を用いた医療人材育成の取組-
本学医学部医学科総合診療学講座では、現実に作用する身体性のあるバーチャル技術の研究?開発を行うイマクリエイト株式会社(本社:東京都品川区、代表者:山本彰洋、以下「イマクリエイト」)と共同で、バーチャルリアリティ(以下VR)による仮想空間上に、ChatGPTを用いて学習者の医療面接(問診)に対してAIが即時に回答を生成するコンテンツや3DCGを用いて診療手技を実践形式で学習できるコンテンツを搭載し、学生が医療面接から診察、処置までを総合的に学ぶことができる学習環境の拡充を行いました。
新潟県全体が抱える医師不足などの課題解決や遠隔診療への応用も視野に入れて、まずは医学教育ツールとして学生の実習で実際に活用し、今後も開発を続けていきます。
1.新潟県の医療課題と新潟大学の取り組み
新潟県は医師不足、住民や医師の高齢化、地理的背景から医療アクセスへの不均衡の解消が喫緊の課題で、新潟の明るい未来社会を創るために、人材育成と課題解決法の確立が重要です。
人材育成の点では、本学の医学部定員及び新潟県の地域枠定員は全国最多となりました(篮球比分直播5年度の本学医学部医学科定員数:140名、全国の10大学医学部の新潟県の地域枠医学生定員数:70名)。そして、今後の課題は、これらの人材の育成法の構築と新潟県の医療の質確保と向上のための課題解決です。
※大学医学部地域枠とは
将来、県内の地域医療を担う医学生を選抜し、卒業後、県内の指定された医療機関で9年間の勤務(指定勤務)を義務付ける制度。貸与する修学資金は、9年間の指定勤務で全額返還免除される。
2.ChatGPTやVRを用いたコンテンツ開発の背景
本学医学部では、この人材育成と課題解決法の一つとして、厚生労働省事業である総合的な診療能力を持つ医師養成の推進事業で『新潟方式総合診療医育成コース』を開始し、全身を診てありふれた一般的な疾患を初期対応し、患者さんの生活背景や心理的因子にも思いを及ぼし、必要時に専門医に相談できる総合診療医を育成するための卒前卒後の一貫した総合診療医育成教育を行っています。そしてオンデマンドの教育ツールやオンラインセミナーなど、インターネットさえつながれば、誰がどこにいても質の高い学習ができる環境を整備しています。この取り組みは、臓器別専門医であってもリカレント教育によって総合的な診療能力を習得できることから、新潟県の医療の質向上に結び付きます。
そこで、実際の医療手技の体験学習やネットワークによる接続、AIなどのテクノロジーと相性の良いVRという手段を選択し、医療環境を模した空間で実際に患者を問診し、手を動かして診察?診療手技を学ぶ質の高い体験型コンテンツをイマクリエイト社と共同開発しました。
この方法論を発展させて、現在注目されている遠隔診療がこのVRの仮想空間で実現できるよう、学習と医療提供をシームレスに行えるシステムにしたいと考えています。また、この学習教材は、他の職種の教育?訓練にも活用することができ、実際、本学医歯学総合病院の看護部で導入しています。
3.今回開発したコンテンツ内容
VRを用いた仮想空間内で、実際に手を動かしながら正しい処置を体験し、学習するコンテンツです。2022年6月にまず7つの手技を学ぶコンテンツ(腹部視診、腹部聴診、腹部打診、心電図測定、血液ガス検査、下腿浮腫の検査、血圧測定)を開発し(2022年6月のPR)、4年生以降の診療参加型実習時に活用したところ、様々な手技を習得できて、実習の予習?復習に効果的でした。またオープンキャンパス等を通じて多くの学生に体験いただき、医学部入学前の医療知識のない対象者でも自学?自習できることが明らかになりました。
そこでこれらの成果に基づき開発を続け、今回はChatGPTを用いた医療面接(問診)を学ぶコンテンツや実践的な診療手技(腹腔穿刺、胸腔穿刺、CVC(※1)、PICC(※2))を学ぶコンテンツを完成させました。さらに、これまでの独立コンテンツを病院?診察室を模した一つの空間内で学べるように再構築し、実際の医療現場での問診?診察?検査?治療手技が一連の流れとして訓練できるようなシステムを構築しました。
(※1)CVCとは
Central venous catheterの略で、中心静脈カテーテルのこと。
(※2)PICCとは
Peripherally inserted central venous catheterの略で、末梢挿入型の中心静脈カテーテルのこと。
例1 ChatGPTを用い、自由度の高い医療面接(問診)を行うことができます。
例2 学習者が自分の手で、VR内の患者の診察を行うことができます。
例3 学習者が、腹腔穿刺やカテーテル挿入などの手技をVR内で訓練することができます。
?4.今後の予定
コンピュータ画像(CG)によるVRだけでなく、実画像を交えたVRの併用も検討しています。手技の練習だけでなく、オリエンテーションや院内ツアー等に活用できます。
本ニューストピックスのPDF版
バーチャルリアリティや生成AIを組み合わせた仮想空間での実践的な学習方法の開発?活用-最新技術を用いた医療人材育成の取組-(PDF:1.0MB)
本件に関するお問い合わせ先
広報事務室
E-mail pr-office@adm.niigata-u.ac.jp