このページの本文へ移動
  1. ホーム
  2. ニュース
  3. T細胞性急性リンパ性白血病治療の改善-成人と小児の多施設共同臨床試験の結果-

T細胞性急性リンパ性白血病治療の改善-成人と小児の多施設共同臨床試験の結果-

2023年05月15日 月曜日 研究成果

本学医歯学総合病院小児科が参加した、日本小児がん研究グループ(JCCG)と成人白血病共同研究機構(JALSG)が国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けて共同で実施した急性リンパ性白血病に対する臨床試験の結果が、科学誌「Lancet Haematology」に受理され、2023年5月8日にオンラインで発行されました。本研究により、従来成績が悪かったT細胞性急性リンパ性白血病(注1)の治療成績が、世界でもトップレベルにまで上昇しました。本研究では0歳から25歳までの小児とAYA世代(注2)を対象としており、本研究の結果、T細胞性急性リンパ性白血病を発症した多くの小児、AYA世代の患者を救うことができるようになりました。本研究では本学大学院医歯学総合研究科小児科学分野の今井千速准教授(病院教授)が研究運営に重要な役割を果たし、共同筆頭著者として結果の解析および執筆を担いました。

本研究成果のポイント

  • 従来、T細胞性急性リンパ性白血病の生存率は約70%程度でしたが、全国125施設が参加した多施設共同臨床試験により、3年後の無イベント生存率(治療不応や再発なく生存する割合)86.4%、全生存率91.3%まで改善することができました。
  • 同時に、副作用の強い「放射線治療」や「造血幹細胞移植」を受ける患者の割合を減らすことに成功しました。
  • ネララビンという新薬を用いたこと、従来からあるL-アスパラギナーゼやデキサメタゾンの投与方法を工夫したことなどが、治療成績の改善につながったと考えられます。
  • この成績は世界でもトップレベルのものであり、世界における今後の治療方針にも大いに影響を与えることが予想されます。
【用語解説】

(注1)T細胞性急性リンパ性白血病
急性リンパ性白血病は血液のがんで、成人よりも小児?思春期に多く発生する病気です。急性リンパ性白血病のうち80~85%は「前駆B細胞性」に分類され、「T細胞性」、すなわちTリンパ球(またはT細胞)由来の白血病(血液のがん)は10~15%を占めています。「T細胞性」は前駆B細胞性と細胞の由来が違うため抗がん剤治療の効き方が相対的に悪く、前駆B細胞性と比べると一般に難治性であることが知られています。

(注2)AYA世代
Adolescent(思春期)とYoung Adult(若年成人)の頭文字をとって、AYA世代という呼称が、小児と成人の狭間の世代である「思春期?若年成人」を表すのに用いられています。「AYA」は日本ではアヤ、英語ではエイワイエイと読みます。

研究内容の詳細

T細胞性急性リンパ性白血病治療の改善-成人と小児の多施設共同臨床試験の結果-(PDF:0.7MB)

論文情報

【掲載誌】Lancet Haematology
【論文タイトル】Nelarabine, intensive L-asparaginase, and protracted intrathecal therapy for newly diagnosed T-cell acute lymphoblastic leukaemia in children and young adults (ALL-T11): a nationwide, multicenter, phase 2 trial including randomisation in the very high-risk group
【著者】Atsushi Sato, Yoshihiro Hatta, Chihaya Imai, Koichi Oshima, Yasuhiro Okamoto, Takao Deguchi, Yoshiko Hashii, Takashi Fukushima, Toshinori Hori, Nobutaka Kiyokawa, Motohiro Kato, Shoji Saito, Kenichi Anami, Tatsuhiro Sakamoto, Yoshiyuki Kosaka, Souichi Suenobu, Toshihiko Imamura, Akiko Kada, Akiko M. Saito, Atsushi Manabe, Hitoshi Kiyoi, Itaru Matsumura, Katsuyoshi Koh, Arata Watanabe, Yasushi Miyazaki, Keizo Horibe (下線は共同筆頭著者)
【doi】10.1016/S2352-3026(23)00072-8

本件に関するお問い合わせ先

広報事務室
E-mail pr-office@adm.niigata-u.ac.jp

他のニュースも読む