ヒトパレコウイルスが細胞へ侵入し感染するために必要な細胞膜蛋白質を同定
ヒトパレコウイルス3型(PeV-A3)(注1)は、子供や大人に発熱、上?下気道炎、胃腸炎、発疹などを引き起こすウイルスですが、時に新生児?早期乳児に敗血症(注2)や髄膜脳炎(注3)などの重症感染症を引き起こすことが大きな問題となっています。
本学大学院保健学研究科検査技術科学分野の渡邉香奈子准教授、本学大学院医歯学総合研究科ウイルス学分野の藤井雅寛教授(現?客員研究員)らの研究グループは、本学大学院医歯学総合研究科小児科学分野(齋藤昭彦教授)、本学大学院医歯学総合研究科機能制御学分野(山下俊一助教、神吉智丈教授)、国立感染症研究所、金沢医科大学との共同研究で、MYADM(注4)蛋白質が、PeV-A3が細胞に侵入し感染するために必須のヒト蛋白質であることを発見しました。本研究成果は、PeV-A3感染症が重症化するメカニズムの解明および治療薬の研究開発につながると期待されます。
本研究成果のポイント
- MYADMが、PeV-A3が細胞に侵入し感染するために必須な細胞蛋白質であることを発見しました。
- PeV-A3は、細胞膜上のMYADMの細胞外領域に結合し、細胞に侵入し感染することを明らかにしました。
【用語解説】
(注1)ヒトパレコウイルス(PeV-A)
PeV-Aはピコルナウイルス科パレコウイルス属に分類されるRNAウイルスです。PeV-Aには19の遺伝子型(PeV-A1―A19、1型~19型)が存在します。臨床検体からは、PeV-A1(1型)とPeV-A3(3型)が最も多く検出されます。PeV-A1およびPeV-A3はともに、乳幼児に発熱、上?下気道炎、胃腸炎、発疹などを引き起こします。一方で、PeV-A3は、時に、新生児?早期乳児に重症の感染症を引き起こします。
(注2)敗血症
ウイルスや細菌の感染症が原因となって、炎症が全身に広がり、熱や心拍数が増えたり、手足が冷たくなったり、血液が全体にうまく運ばれないなどの全身の症状が起きている状態。
(注3)髄膜脳炎
髄膜炎と脳炎が一緒にみられ、ウイルス感染などでみられる病態。髄膜炎とは脳や脊髄を包んで保護している髄膜に炎症が起きた病態。脳炎は脳に炎症が起きた病態。
(注4)MYADM(myeloid-associated differentiation marker)
MYADMは細胞膜に存在する8回膜貫通型の蛋白質です。造血幹細胞が骨髄系細胞に分化する際に発現量が増加する蛋白質として同定されました。MYADMは免疫および炎症反応に関与することが示されています。
研究内容の詳細
ヒトパレコウイルスが細胞へ侵入し感染するために必要な細胞膜蛋白質を同定(PDF:0.7MB)
論文情報
【掲載誌】Nature Communications
【論文タイトル】Myeloid-associated differentiation marker is an essential host factor for human parechovirus PeV-A3 entry
【著者】渡邉香奈子、岡智一郎、高木弘隆、セルゲイ アニシモフ、山下俊一、葛城美徳、高橋雅彦、樋口雅也、神吉智丈、齋藤昭彦、藤井雅寛
【doi】10.1038/s41467-023-37399-8
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