糖尿病性腎症による透析導入率は低下、腎硬化症は増加-腎硬化症による透析導入率は若年者でも増えており、その対策が急務-
糖尿病性腎症は、透析導入(注)の原因となった疾患(原疾患)の約4割を占め、日本の透析導入の原疾患で第1位です。そして、腎硬化症が第2位です。近年、糖尿病性腎症の割合は減少傾向にあり、腎硬化症の割合が増加傾向にあることが日本透析医学会調査で示されていますが、年齢で調整されておらず、本当に腎硬化症が増えているのか、高齢化の影響なのかが不明でした。そこで、本学大学院医歯学総合研究科臓器連関学講座の若杉三奈子特任准教授らのグループは、2006年から2020年までの透析導入率を、原疾患別に、年齢調整をして経年変化を評価しました。その結果、慢性糸球体腎炎と、糖尿病性腎症では低下していたのに対し、腎硬化症は増加していました。腎硬化症による透析導入の増加は、高齢化の影響だけではないことが示されました。さらに、男性では、20-39歳といった若い世代も含めて、全年齢階級で腎硬化症による透析導入率は増加していました。慢性腎臓病(CKD)重症化予防を徹底し、新規透析導入患者数の減少を達成するために、増え続ける腎硬化症への対策が急務と考えられます。
本研究成果のポイント
- 2006年から2020年までの透析導入率を、その原因となった疾患別に検討。
- 年齢調整した透析導入率は、慢性糸球体腎炎、及び、糖尿病性腎症では低下。
- 一方、腎硬化症は増加しており、この増加は高齢化の影響だけではない。男性では、全年齢階級(20-39歳、40-59歳、60-74歳、75-84歳、85歳以上)で腎硬化症による透析導入率は増加しており、その対策が急務である。
【用語解説】
(注)透析導入とは、CKDが進行し、腎臓の機能が低下した状態(末期腎不全)に至ったため、透析療法を開始されたことを意味します。なお、透析療法を経ずに、腎移植が行われる場合もありますが、日本では極めて少数例です。
研究内容の詳細
糖尿病性腎症による透析導入率は低下、腎硬化症は増加-腎硬化症による透析導入率は若年者でも増えており、その対策が急務-(PDF:0.6MB)
論文情報
【掲載誌】Nephrology(Carlton)
【論文タイトル】Trends in the incidence of renal replacement therapy by type of primary kidney disease in Japan, 2006-2020
【著者】Minako Wakasugi, Ichiei Narita
【doi】10.1111/nep.14134
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