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地殻–マントル境界と海洋地殻の成因に関する新しいモデルを提唱

2022年09月21日 水曜日 研究成果

発表のポイント

  • これまで地殻とマントルは物質として異なるため、その境界(モホロビチッチ不連続面)は明瞭であるという「ペンローズモデル」が広く支持されてきたが、北西太平洋海域を調査した結果、予想外にもその90%以上で境界が明瞭ではないことがわかった。
  • このことは、これまで定説とされたモデルでは説明できないものであり、海洋地殻とモホロビチッチ不連続面形成のプロセスについて新しい知見を示唆している。今回の調査結果を踏まえ、海洋地殻を形成する中央海嶺に海水が流入する場合、限定的に、より多くのマグマが生成して地殻が厚くなり境界は明瞭となり、海水が流入しない大部分の場合では、境界は不明瞭になる、という2つのプロセスがあるとした新しいモデルを提唱した。
  • 今回提唱したモデルについては、今後更なる調査や検証が必要。

概要

国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 大和裕幸、以下「JAMSTEC」という。)海域地震火山部門 火山地球内部研究センター 田村芳彦上席研究員(シニア)らは、地殻-マントルの境界であるモホロビチッチ不連続面(以下「モホ面」という。)と海洋地殻の成因に関する新しいモデルを提唱しました。
これまでのモホ面に関する定説では、「地殻とマントルは、それぞれの物質組成が異なることから、その境界であるモホ面で地震波の伝わる速度が大きく変化する」とされていますが、モホ面の実態は依然として不明な点が多く、長らく地質学者の議論の的になっていました。
本研究では、JAMSTECがこれまで北西太平洋の海底でおこなってきた総距離3,000kmを超える反射法地震探査(※1)及び屈折法構造探査(※2)によるモホ面での地震波の伝播に関する研究結果と、オマーン王国におけるオフィオライトの地殻-マントル境界の岩石学的研究をもとに、モホ面の実態と成因を検証しました。
その結果から、海洋地殻を形成する中央海嶺に海水が流入する場合、より多くのマグマが生成して地殻が厚くなり境界は明瞭になる一方、海水が流入しない場合、境界は不明瞭になるという海洋地殻とモホ面の関係を表す新たな成因モデルの構築に至りました。
本モデルは、地球表面で最大の面積に広がる岩石圏である海洋地殻と人類未到のモホ面の実態に迫った画期的なものですが、今回の研究成果は北西太平洋での調査とオマーンでの陸上調査から得たものですので、ここから地球という惑星がどのような内部構造となっているのかを理解するためには、更なる調査や検証が必要です。
なお本研究は、JSPS科研費JP17H02987、JP16H06347、JP16H02742、及びJP21H01195の支援を受けて行われました。
本成果は、日本地質学会の国際誌「Island Arc」に9月21日付け(日本時間)で掲載されました。

【用語解説】

(※1)反射法地震探査:海面で発した音波が地下で反響して返ってきた反射波(エコー)を海面で観測し、はね返ってくるまでの時間(往復走時と呼ぶ)から、音波の反射面までの深さを捉える調査方法。音波は性質の違う物質が接する面でよく反射するため、水と堆積層が接する海底面や堆積層と基盤岩が接する堆積層の下面、さらに地殻とマントルの境界は、反射法探査によって検出しやすい構造境界面となる。この両者の往復走時(msec)の差は堆積層や地殻の厚さに相当する。

(※2)屈折法構造探査:OBSは地震計?電池などを耐圧容器に納めた、海底で地震観測を行う計測器のこと。OBSを用いた屈折法構造探査とは、事前に海底設置したOBSに向けて海面から音波を発振し、地下深部を通って海底に戻ってくる波を受信することで深部の地震波速度構造を捉える観測手法。

本学の共同研究者

理学部 高澤栄一教授

研究内容の詳細

地殻–マントル境界と海洋地殻の成因に関する新しいモデルを提唱(PDF:1.0MB)

論文情報

【掲載誌】Island Arc
【論文タイトル】The Nature of the Moho beneath Fast-Spreading Centers: Evidence from the Pacific Plate and Oman Ophiolite
【著者】田村芳彦(Yoshihiko Tamura)、マチュー?ロスパビ(Mathieu Rospabé)、藤江剛(Gou Fujie)、大平茜(Akane Ohira)、金田謙太郎(Kentaro Kaneda)、アレキサンダー?ニコルス(Alexander R. L. Nichols)、ジョージ?セルニア(Georges Ceuleneer)、佐藤智紀(Tomoki Sato)、小平秀一(Shuichi Kodaira)、三浦誠一(Seiichi Miura)、高澤栄一(Eiichi Takazawa)
【doi】10.1111/iar.12460

本件に関するお問い合わせ先

広報室
E-mail pr-office@adm.niigata-u.ac.jp

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