卵巣がんの抗がん剤耐性機序に関与する分子を同定-卵巣がん患者由来の3次元培養細胞を用いた新たな解析手法に基づく成果-
本学大学院医歯学総合研究科産科婦人科学分野の榎本隆之教授、医歯学総合病院総合周産期母子医療センターの山脇芳助教らの研究グループは、国立がん研究センター研究所がん分化制御解析分野の岡本康司分野長らとの共同研究により、卵巣がん患者腹水中のがん細胞から作成した3次元培養細胞(スフェロイド細胞)(注1)を用いた新たな解析手法を駆使し、再発卵巣がんで問題となるプラチナ製剤に対する耐性化の機序に関与する分子を同定しました。本研究結果はElsevier社の科学雑誌Cancer Letters誌に掲載されました。
本研究成果のポイント
- 卵巣がん患者の腹水より、3次元培養細胞である卵巣がんスフェロイド細胞を複数作成しました。
- 卵巣がんスフェロイド細胞の抗がん剤感受性の違いに着目した新しい解析手法により、プラチナ製剤の耐性機序に関与する分子として、グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)とそれに関与する一群の酸化還元酵素を同定しました。
- プラチナ製剤の一種である抗がん剤シスプラチンとG6PDの阻害剤を併用することで、プラチナ製剤への耐性を克服できることを細胞増殖実験およびマウス実験の結果より見出しました。
【用語解説】
(注1)3次元培養細胞:
3D培養細胞とも言われ、細胞接着性の低いプレート内の培養液中やゲル中で凝集塊(スフェロイド)を形成し、生体内に近い3次元的な状態で培養される細胞のこと。スフェロイドやオルガノイドと呼ばれる3次元培養細胞が現在広くがん研究に用いられています。
研究内容の詳細
卵巣がんの抗がん剤耐性機序に関与する分子を同定-卵巣がん患者由来の3次元培養細胞を用いた新たな解析手法に基づく成果-(PDF:746KB)
論文情報
【掲載誌】Cancer Letters
【論文タイトル】Integrative analyses of gene expression and chemosensitivity of patient-derived ovarian cancer spheroids link G6PD-driven redox metabolism to cisplatin chemoresistance
【著者】Kaoru Yamawaki, Yutaro Mori, Hiroaki Sakai, Yusuke Kanda, Daisuke Shiokawa, Haruka Ueda, Tatsuya Ishiguro, Kosuke Yoshihara, Kazunori Nagasaka, Takashi Onda, Tomoyasu Kato, Tadashi Kondo, Takayuki Enomoto, Koji Okamoto
【doi】10.1016/j.canlet.2021.08.018
本件に関するお問い合わせ先
広報室
E-mail pr-office@adm.niigata-u.ac.jp
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