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オートファゴソームを効率よく作る仕組みを発見~オートファジーの主役の働きが明らかに~

2021年07月09日 金曜日 研究成果

本研究成果のポイント

  • 脂質化Atg8は細胞内の不要な物質を分解する仕組み(オートファジー)で中心的な働きをするたんぱく質であり、その脂質膜上での立体構造が初めて明らかになった。
  • 脂質化Atg8は、膜の形を変化させることにより、細胞内の異物を包み込む膜(オートファゴソーム)を効率よく作っていることが分かった。
  • 細胞内でオートファゴソームを生み出す分子機構の一端が明らかとなり、それを標的とした薬剤の開発につながることが期待される。

 

JST戦略的創造研究推進事業において、微生物化学研究所の野田展生部長、丸山達朗研究員らは、オートファジーで中心的に働くたんぱく質である脂質化Atg8(注1)が膜の形態を変える活性を持つことを新たに発見し、その活性がオートファゴソームを効率よく作るのに重要であることを明らかにしました。
細胞内のたんぱく質などを分解する仕組みの1つであるオートファジーにおいて、オートファゴソームの形成は分解すべき対象を決定するための極めて重要なステップです。これまでに脂質化Atg8がオートファゴソームの形成において中心的な役割を果たすことが分かっていましたが、脂質化Atg8が脂質膜上でどのように働いているのか、その実体は分かっていませんでした。
本研究グループは、まず脂質化Atg8が膜の形態を変える活性を持つことを試験管内の実験で明らかにしました。次に脂質化Atg8の立体構造を溶液核磁気共鳴(NMR)法(注2)で調べた結果、脂質化Atg8は脂質膜に対して特定の配向を取ることが分かりました。また、脂質化Atg8が脂質膜と相互作用する部位のアミノ酸を同定し、そこに変異を入れたところ、膜の形態を変える活性が失われ、オートファゴソーム形成効率も著しく低下することを見いだしました。以上のことから、脂質化Atg8は脂質膜と相互作用してその形態を変える活性を持っており、この働きによりオートファゴソームの形成を促進することを明らかにしました。
本研究によりオートファゴソーム形成に関わる分子機構の一端が解明され、今後、オートファジーを特異的に制御する薬剤の開発につながることが期待されます。
本研究成果は、2021年7月8日(英国時間)に英国科学誌「Nature Structural & Molecular Biology」のオンライン版で公開されました。

本学の共同研究者

新潟大学大学院医歯学総合研究科機能制御学分野
神吉 智丈 教授

 

【用語解説】
(注1)脂質化Atg8:膜を構成するリン脂質と共有結合を形成したAtg8の名称。リン脂質は、リン酸エステルを持つ脂質の総称で、親水性の部分と疎水性の部分の両方を持っており、脂質膜に主に含まれている。脂質化Atg8はオートファゴソームや隔離膜に豊富に見られることから、オートファジーの指標分子として広く研究に活用されている。
(注2)核磁気共鳴(NMR)法:強い磁場中に置かれた原子核は、原子核の性質や周囲の環境に応じた周波数(共鳴周波数)の電磁波と相互作用する。核磁気共鳴法は、その電磁波をNMR信号として捉えることで、物質の構造や性質の情報を取得する手法。NMRはNuclear Magnetic Resonanceの略。

研究内容の詳細

オートファゴソームを効率よく作る仕組みを発見~オートファジーの主役の働きが明らかに~(PDF:1.2MB)

論文情報

【掲載誌】Nature Structural & Molecular Biology
【論文タイトル】Membrane perturbation by lipidated Atg8 underlies autophagosome biogenesis
【著者】Tatsuro Maruyama, Jahangir Md. Alam, Tomoyuki Fukuda, Shun Kageyama, Hiromi Kirisako, Yuki Ishii, Ichio Shimada, Yoshinori Ohsumi, Masaaki Komatsu, Tomotake Kanki, Hitoshi Nakatogawa, Nobuo N. Noda
【doi】10.1038/s41594-021-00614-5

本件に関するお問い合わせ先

広報室
E-mail pr-office@adm.niigata-u.ac.jp

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