ハクサイの開花を制御するメカニズムを解明しました
本学大学院自然科学研究科シェイ ダニエル(研究支援者),岡崎桂一教授は,神戸大学大学院農学研究科らと共同で,ハクサイの開花抑制遺伝子(FLC)の発現抑制に,従来のモデル植物で提唱されている機構とは異なり,長鎖非コードRNAが関与しない可能性を明らかにしました。
野菜として重要なハクサイ(Brassica rapa L.)の開花のためには,一定期間(4週)連続して低温に遭遇する必要があります。このプロセスは春化として知られており,モデル植物のシロイヌナズナでは,低温応答性の長鎖非コードRNA(lncRNA)が重要な役割を果たすことが示唆されています。ハクサイ近交系の葉におけるトランスクリプトーム解析から同定した 2,088のlncRNAのうちの549は,4週間の低温処理に反応してそれらの発現を有意に変化させました。低温処理前後で発現が変化したlncRNA は,同じ遺伝子領域から転写されるmRNAにおける発現レベルの変化をもたらさず,lncRNA-mRNAの組合せにおいて,低温処理に対する転写応答はそれぞれ独立していると考えられました。しかしながら,低温処理によって発現が変動したmRNA(遺伝子)のいくつかには,同調的に同じ方向に発現が変化するlncRNA のひとつnatural antisense transcripts (NATs)が発見されました。これらのmRNA(遺伝子)は低温処理など非生物的ストレス応答に関与することが知られており,このことは,今回のハクサイの低温処理の前後で見られたmRNAとNATsの同調的発現調節が,低温処理に対する転写応答において役割を果たしていることを示唆しています。また,開花抑制遺伝子BrFLCおよびBrMAF遺伝子座において,低温処理によって誘導されるNATsを同定しました。本研究グループが同定したlncRNAは,シロイヌナズナで報告されたものとは異なり,春化におけるlncRNAの役割はこれら2つの種の間で異なることを示唆しています。本研究で明らかにしたハクサイの春化調節機構の一知見は,ハクサイの品種育成の効率化へと発展する可能性が期待されます。
この研究成果は,2019年6月26日午前10時(イギリス時間)に,Scientific Reportsにオンライン掲載されました。
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