医歯学系の小松雅明教授が第14回日本学士院学術奨励賞受賞者に決定しました
医歯学系の小松雅明教授が,日本学士院の第14回(平成29年度)日本学士院学術奨励賞受賞者に決定しました。
この賞は,優れた研究成果をあげ,今後の活躍が特に期待される若手研究者に贈られるもので,同年度の日本学術振興会賞受賞者のうち,6名以内に授与されます。? (平成29年度日本学術振興会賞の記事はこちら)
小松教授は,「選択的オートファジーの異常と消化器疾患発症機序の解明」の研究業績が認められ,このたびの受賞となりました。
授賞式は2月7日(水)に日本学士院(東京都台東区)において,日本学術振興会賞と併せて行われます。
研究課題
選択的オートファジーの異常と消化器疾患発症機序の解明
(Elucidation of the Role of Aberrant Selective Autophagy in Pathogenic Mechanisms of Digestive Diseases)
受賞理由
小松教授は、個体レベルでのオートファジー研究がほとんど行われていなかった時期に、世界に先駆けオートファジーを肝臓や脳特異的に欠損させることにより、肝障害、神経変性疾患が発症することを明らかにしました。
このことは、オートファジーが飢餓状態だけに作用するのではなく、高等動物では、壊すべきタンパク質やオルガネラを厳密に選別し、恒常的に細胞内浄化のためにオートファジーを用いていることを示しています。
オートファジーによって選択的に分解されるべきタンパク質が、オートファジーの障害によって異常タンパク質凝集体や変性オルガネラの蓄積を引き起こし、いろいろな疾患(肝細胞がんや神経変性)の発症原因になることを証明しました。
さらに、生体の抗酸化ストレス応答の制御にもオートファジーが重要な役割を果たしていることを明らかにしました。
これらの成果は、多くの生命現象がオートファジーにより制御されていることを証明したものとして高い評価を受けています。
受賞した小松雅明教授のコメント
今回、髙橋姿学長にご推薦頂き、第14回日本学術振興会賞、そして日本学士院学術奨励賞を受賞致しました。ありがとうございました。
私は、世界に先駆けてオートファジーがたんぱく質やオルガネラの品質管理機構に貢献すること、そしてその破綻が重篤な肝障害や肝腫瘍を引き起こすことを見出しました。
さらに、一般に非選択的分解機構と考えられてきたオートファジーに上記病態発症に関与する選択基質があることを発見しました。
本研究は、これまで栄養飢餓に対応したアミノ酸供給が主な生理的役割と考えられてきたオートファジーが、高等動物では細胞内の特異的なたんぱく質や機能を消失したオルガネラを選択的に分解することで、恒常的に重要な機能を担っていることを初めて明らかにしたものです。
と同時に、肝細胞がん等の悪性腫瘍の新しい予防法?治療法開発に役立つと考えられ、その波及効果は非常に大きいと思われます。
オートファジーはその発見以来、細胞内の大規模な分解機構と定義されており、細胞内のたんぱく質を狙って選択的に分解することはないと信じられていました。
この概念を覆すため、多彩な分野の研究者たちと分野横断的な共同研究を展開してきました。
そこから得られた膨大なデータ、そして共同研究者の調整に苦労しながらも、選択的オートファジーの存在、そしてその異常と病態発症を明らかにすることができました。
研究室のスタッフ、そして多くの共同研究者に感謝いたします。
今後も本学あるいは国内外の研究者と広く共同研究展開し、新たな発見を目指していきたいと考えております。
本件に関するお問合わせ先
広報室
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