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乳酸菌の健康機能
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原 崇 准教授自然科学系(農学部) Profile博士(農学)。専門は、細胞制御工学?食品科学。 |
酒粕由来の乳酸菌が秘めているアレルギー予防?免疫強化の可能性
味噌や醤油、日本酒にヨーグルト…。
私たちの周囲には、乳酸菌由来の発酵食品が溢れるほど存在している。この乳酸菌の新たなる可能性を日々探しているのが、原崇准教授だ。
「近頃では馴染み深くなった健康食品?機能性食品という言葉。体調を調節する働きがあり、健康維持?増進や疾病予防につながる食品――これが健康食品?機能性食品です。20世紀後半からの生命科学の飛躍的進展に伴い、食品の健康機能の科学的解明が進み、効果の薄いものは機能性食品と名乗ることができない時代となってきました。私が興味を持っている乳酸菌の働きについて、約100年前から既に科学者の研究対象となってきましたが、近年、予想を超える健康機能が解明されつつあります」
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乳酸菌摂取によるアトピー様皮膚炎症状の緩和
日本人のみならず、世界の人々、そして、食生活と古くから密接な関係を持つ細菌の一つ、乳酸菌。乳酸菌は、乳酸をつくる数百種類の微生物の総称で、発見されていないものが自然界には沢山いるのだという。
「私が研究している中で見つけたのが、乳酸菌の新しい機能――それが免疫への働き。アレルギー予防などに乳酸菌が有効であるということなんです」
食物は食道から胃を通り、腸へいく。腸で最終消化と分解が行われ、栄養素や水分を吸収する。
「腸管は栄養を吸収するだけでなく、人体における検疫所のような役割を担う。腸管には免疫細胞が集まり、体内に入ってくる食物や微生物を常に監視している。そこで、腸管における免疫の働きを活発にする食品がないか調べてみたところ、乳酸菌にその働きがあることが分かってきました。特に日本酒の酒粕にいた乳酸菌は、アレルギーの予防、免疫の強化に効果的である、と。この答えに行き着いたのは、2008年頃のことです」
民間企業とともに研究を進め、乳酸菌の働きを生かした機能性食品素材の発売へ至ったという。しかし、原准教授の研究の達成度合いはまだ2割にも満たないとか。
「どの細胞のどの分子に、乳酸菌のどの成分が効いているのか。そのような仕組みが科学的に立証されていません。この仕組みを立証することが、研究の一つの目標で、新たな発見にもつながります。仕組みが分かれば、効果の科学的裏付けとなる。農学のジャンルを超えて、薬の開発につながるかもしれない。食物アレルギー患者さんは、原因となる食物を食べないようにし、でてしまった症状を薬で抑えるのが現状で、根本的な治療法は未だ確立されていません。まだまだ分からないことばかりで、仕組みの解明へ向けて研究を続けたいと思います」
医療の現場でも有益となる可能性を秘めた原准教授の研究。この新しい乳酸菌の働きの研究は国内外から熱い視線を集めている。
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細菌培養実験の様子