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20世紀前半期日本の都市における政治と社会の変化に関する研究
中村 元 准教授人文社会科学系(人文学部) Profile博士(史学) |
従来は政治や社会の担い手と想定されなかった人たちに注目し、都市における状況をとらえる
中村元准教授は1920年代以降、日本社会が農村から都市化していく中で展開されてきた政治?社会的問題について研究。大都市とその周辺都市との関係性が政治や社会とどのようにリンクしてきたのかを明らかにする。これは都市史において、従来あまり注目されていなかった中村准教授ならではの視点だ。
「私が対象にしてきたのは東京近郊の八王子市です。1920年代以降、大都市東京の影響をうけつつ都市形成をすすめていました。一方、1925年に施行された男子普通選挙法により政治的に大きな変化を迎えた時期でもあります。このような空間的な都市の変化と政治の変化を絡めた議論を考えています」
男子普通選挙法により、既成政党の政治対立は激化し、さらに従来は政治参加できなかった第3極の人たちも登場。彼らも都市政治の重要な要素になり、政治勢力は多様化していく。複雑な状況下で、大都市の周辺都市としての課題にどう応えていったのかに注目している。
「都市計画事業が行われると、土木工事に従事する労働者が都市に入ってきます。同じ頃には、在日朝鮮人や露天商など、従来は政治や社会秩序の担い手とみなされなかった人たちが活性化します。必ずしも彼らの政治参加の度合いだけに限定せず、社会的に与えた影響力なども視野に入れて研究を進めています」
そのような大都市とその周辺の変化の中にある構造を押さえる一方で、そこに暮らしていた当事者たちの社会の見方や関心についても研究。どのような資料を参考にするのか。
「労働者のリーダー格だった人物の資料や遺族を探し、履歴書やその人が書いた文書を見せてもらったりしています。労働者を対象にした事業は彼の経歴の中でどんな意味があったのか。あるいは、露天商が発行していた業界向けの新聞や資料からは当時の彼らの視点を見てとることができます。都市の政治主体ではないと想定されていた人たちの資料は、これまであまり探されていなかったようです。しかし、探せば意外とあるもの。“彼らの動向は意味がない” と思ってしまえばそれまで。しかし、彼らの存在も時代の状況や政治の変化を色濃く反映しているのです」
これまで注目されてこなかったマイノリティを含む第3 極の人々の視点から、20~40年代の都市における状況をとらえる注目の研究だ。
八王子を対象とした研究をまとめた著書。 昨年、発行した |
1920年代以降の東京の都市計画が伺える図 |
労働者や露天商といった人々の視点を物語る貴重な資料 |