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内耳蝸牛の仕組みと働きの解明 薬物モニターシステムの開発

 

日比野 浩 教授

大学院医歯学総合研究科(医学部)

Profile

博士(医学)。
内耳聴覚生理を専門に研究

大学院医歯学総合研究科(医学部)日比野 浩 教授

各部を芸術的に組み合わせ聴覚を成立させる蝸牛の仕組みに迫る

国内の難聴患者は1,000万人以上と言われ、人口の1割に相当する。難聴の多くは難治性。耳の奥にある内耳蝸牛と呼ばれる臓器の障害によって起こる。日比野浩教授の研究室ではこの病気の克服に貢献するため、内耳蝸牛の仕組みと働きの基礎研究に注力する。

「音は空気の振動。それを脳で感知するためには、音の機械的刺激を電気信号に変換することが必要です。また、ヒトの耳は3メートル先の蚊の音から直近の飛行機のジェットエンジン音まで、なんと100万倍の音圧差を受容することができます。さらに、認識できる周波数領域はピアノを凌駕する10オクターブですが、それにも関わらず0.0025オクターブの差を聴き分けることができます。このような類まれな聴覚の特性を担うのが蝸牛なのです」
その中の機能は実に多様。音をナノ振動として受容する膜、音を周波数別に分析するフーリエ変換器、振動を電気変換するトランスデューサー、信号を増幅するアクチュエーター、特殊なイオン組成に基づく濃淡電池まである。
「重要なのは、これらの機能が芸術的に組み合わさって美しいハーモニーを奏でることで聴覚が成立していること。その精密機器の設計図を描くために、従来の分子生物学実験に加え、理工系の先生方とともに異分野融合研究を積極的に推進し、数理計算を用いた研究も行なっています」

さらに最近は、内耳研究の発展の結果、生体内で薬の振る舞いと効きめを同時にリアルタイム計測できるシステムを慶応大学理工学部のグループと共同で創出した。
「ダイヤモンド電極センサーを使った薬物モニターシステムを動物実験で成功させました。これは世界初の成果。これらを発展させることは内耳研究に留まらず、様々な臓器に対し副作用を抑えて効果を最大にする投薬法や、安全で有効な創薬開発などに貢献できる可能性があります」

内耳蝸牛の断面図
内耳蝸牛の断面図
内耳における音伝達の仕組み
内耳における音伝達の仕組み
針状ダイヤモンド電極センサー
針状ダイヤモンド電極センサー

 

六花 第27号(2019.WINTER)掲載

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