- ホーム
- 佐渡島固有種の保全研究と実践
佐渡島固有種の保全研究と実践
満尾世志人 准教授/
|
絶滅危惧種サドガエルの保全と生産性の両立を実現するほ場整備を目指す
朱鷺?自然再生学研究センターは、トキとの共生を可能にする豊かな自然の維持?再生手法と、それを実現する自然共生社会を提案する“佐渡モデル”の確立を目指している。そして、それを稲作主体の里山景観をもつ日本国内や東アジアの他地域へ拡張?一般化することにより、普遍的な「自然再生学」として体系化することを目標とする。
イベントで捕獲したサドガエル |
岸本圭子准教授が率いる研究チームではサドガエルの保全と、それを実現するほ場整備について取り組む。サドガエルは2012年に新種として発表された佐渡島固有の種。環境省レッドリストにも挙げられ、野生下の絶滅が危惧されている希少な生き物だ。
「現在、サドガエルの主要な生息地である水田地帯でほ場整備が計画されています。一般的に乾田化や水路埋設が進められることから、ほ場整備後の環境は水生の生物にとって厳しい環境になることが予想されます。サドガエルの保全のためにはその生態に配慮した整備が不可欠ですが、本種の生体情報は極めて限られています。まずは、ほ場整備計画に資する情報を提供するため、サドガエルの生態について研究を進めています。サドガエルは他の多くのカエルと違って、オタマジャクシのままで冬を越します。同時に、成体の越冬にも水域が必要です。本種の保全のためには、非耕作期にも安定的な水域を維持できる整備が必須であると考えられ、それをいかに実現するかが大きな課題となっています」(岸本准教授)
一方で、耕作者の負担軽減や生産性改善がほ場整備の大きな目的だ。貴重な生き物の生態を守るためという理由だけで開発を辞めることはできない。複合的な視点が求められるのだ。
「地域の合意が得られないとほ場整備自体が遅れてしまいます。ほ場整備のプロセスと結果において、農業者自身がアイデアを出し合いながら、自ら提案を考えていける場づくりが重要。意思決定の結果に対するオーナーシップを醸成していくこと、それをデザインすることが大切です」(豊田准教授)
「佐渡はトキの野生復帰という主題があり、自然に対する理解が高い。里山の保全と自然共生を実現する社会の実践という意味でも非常に適している土地です。私たちが考える自然再生の取組には地域の理解が不可欠。社会と生き物の両面から見ながら共生モデルを目指します」(満尾准教授)
サドガエルの生態を調査する地域イベントの様子 |
環境と共生するほ場整備を目指す |